正しい説明だけでは届かない|『影響力の武器』を仕事にどう読むか

人に何かを説明するとき、私たちはつい「正しく説明すれば、相手は理解してくれる」と考えます。

もちろん、正確な説明は欠かせません。
根拠のないことや不確かなことを、もっともらしく伝えるべきではありません。

仕事では、内容としては正しく説明できていても、相手にうまく伝わらないことがあります。

説明の内容以外のことが、その受け取り方に影響することもあります。
内容を理解していても、それがそのまま判断や行動につながるとは限りません。

こうしたことは、医療や教育、営業、マネジメント、接客などでは珍しくないと思います。

この記事では、「人を動かすテクニック」としてではなく、人がどのような手がかりをもとに判断し、
何が承諾に影響するのかを、『影響力の武器』を手がかりに考えます。

目次

人はいつも一から考えて判断しているわけではない

私たちは日々、多くの情報に囲まれています。
すべてを一つひとつ検討し、毎回ゼロから考えることはできません。

本書では、動物が特定の「引き金となる特徴」に反応し、一連の行動が自動的に引き起こされる仕組みを
「クリック・実行」と表現しています。

人間にも、特定の手がかりをもとに、すべての情報を詳しく検討せずに判断することがあります。
こうした近道は、すべての情報を詳しく検討しなくても、効率よく判断するために役立ちます。

そう考えると、「正しいことを説明したのだから伝わるはずだ」という前提も、一度見直す必要があります。

好意を持つ相手には「イエス」と言いやすい

承諾するかどうかは、示された内容だけで決まるわけではありません。
相手に対する好意も、その判断に影響します。

本書では、好意を高める要因として、外見の魅力、類似性、称賛、接触、連合などが挙げられています。

ただ、これを「相手に好かれれば、説明を受け入れてもらえる」という話に単純化するのは適切ではありません。

接触を繰り返せば好意が高まるとは限らない

本書では、人や物事との接触を繰り返して馴染みを持つことは、
たいていの場合、好意を促進するとされています。

ただし、この関係は、接触が不快な環境ではなく、快適な環境で起こる場合に当てはまります。

さらに、相互に協力し、その結果として成功が得られる場合には、
接触と好意の関係がより強くなるとされています。

理学療法士として読むなら、「一緒に取り組む関係」をどうつくるか

患者さんや利用者さんとのやり取りでは、身体の状態を説明したり、運動や日常生活について伝えたり、
今後の進め方を相談したりする場面があります。

説明した内容を理解しても、その後の取り組みにつながるとは限りません。
日常生活の中では、時間や環境、これまでの経験など、取り組み方に影響する要素があります。

私の場合は、相手が何に困っているのか、どこまでなら取り組めそうかを確認しながら進めます。
一方的に説明するのではなく、相手と一緒に取り組む。

私は、本書の「好意」や「協力」の話を、こうした関係を考える手がかりとして読みました。

医療以外の仕事ではどう読めるか

教育では、同じ内容を伝えても、生徒がそれをどう受け取るかによって、
その後の理解や行動は変わることがあります。

マネジメントでは、方針そのものだけでなく、
上司との関係や伝えられ方も受け止め方に影響します。

営業や接客では、同じ商品やサービスでも、
誰から説明されるかによって受け取り方が変わることがあります。

仕事が変わっても、同じ内容が同じように受け取られるとは限りません。


『影響力の武器』は、人がなぜ承諾するのか、その仕組みを知る本として読むことができます。

ただ、仕事に引きつけて読むなら、承諾の仕組みを知ることだけで終わらせたくはありません。

相手を動かす方法としてではなく、人がどのような条件で判断しているのかを考えるために、
この本を仕事へ持ち帰りたいと思います。てください。

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