この記事は本の内容を網羅的に要約するものではありません。
読んだ内容を、仕事や実践にどう接続できるかを考える読書ノートです。
「もっと頑張らないといけない」
仕事をしていると、そう感じる場面があります。
もっと早く処理する。
もっと多く調べる。
もっと丁寧に資料を作る。
もっと長い時間をかける。
もちろん、努力が不要というわけではありません。
ただ、『イシューからはじめよ』を読むと、その努力の向け先を間違えることの怖さに気づかされます。
本書が最初に問い直しているのは、仕事の速さでも、作業量でも、情報量でもありません。
それ以前に、
「そもそも、今答えるべき問いは何か」
という点です。
仕事の成果は、どれだけ頑張るかだけで決まるのではない。
どの問いに答えようとしているのかによって、大きく決まってしまう。
これが、序章から第1章にかけて強く示されている視点です。
「問題を解く」前に、「問題を選ぶ」
多くの仕事では、問題が目の前にあるように見えます。
売上が伸びない。
利用者が増えない。
患者さんの状態が変わらない。
部下が育たない。
説明しても伝わらない。
時間が足りない。
すると私たちは、すぐに解決策を探し始めます。
どう改善するか。
どんな方法があるか。
何を調べればよいか。
どう説明すればよいか。
けれど本書は、その前に立ち止まることを求めます。
その問題は、本当に今答えるべき問題なのか。
その問いに答えることで、判断や行動は変わるのか。
そもそも、答えを出せる問いになっているのか。
ここで出てくるのが、本書の中心概念である「イシュー」です。
イシューとは、単なる問題ではありません。
「今、本当に答えを出す価値がある問い」です。
つまり、仕事で重要なのは、目の前にある問題を片っ端から処理することではなく、まず「どの問いに取り組むべきか」を見極めることです。
バリューのある仕事は、2つの軸で決まる
本書では、仕事の価値を考えるうえで、2つの軸が示されます。
1つは、イシュー度。
もう1つは、解の質です。
解の質とは、答えの完成度や精度のことです。
一方で、イシュー度とは、その問いに答える意味の大きさです。
ここで重要なのは、どれだけ解の質が高くても、イシュー度が低ければ、仕事の価値は高くならないという点です。
たとえば、資料が美しく整っている。
分析が細かい。
説明が丁寧。
作業量が多い。
それでも、その問い自体が重要でなければ、成果にはつながりにくい。
これはかなり痛い指摘です。
私たちはつい、「ちゃんとやったか」「頑張ったか」「時間をかけたか」で仕事を評価しがちです。
けれど本書は、そこに対してかなり厳しく問いを投げかけます。
それは本当に、答える価値のある問いだったのか。
「犬の道」とは、努力の問題ではなく順番の問題である
序章で印象に残るのが、「犬の道」という表現です。
これは、低いイシュー度の仕事を大量にこなし、努力と根性で成果を出そうとする働き方を指しています。
この言葉だけを見ると、少し強い表現に感じます。
ただ、ここで批判されているのは、努力そのものではないと思います。
問題は、努力の順番です。
イシューを見極めないまま、解の質だけを上げようとする。
問いを絞らないまま、たくさん処理しようとする。
本当に答えるべき問題を選ばないまま、作業量で補おうとする。
この状態では、本人は頑張っているのに、仕事の価値が上がりにくい。
しかも、疲弊する。
そして最終的には、「頑張っているのに成果が出ない人」になってしまう。
これは、どの仕事にも起こりうることです。
医療やリハビリの現場でも、教育でも、営業でも、マネジメントでも同じです。
目の前の問題に全部対応しようとすると、だんだん「本当に考えるべきこと」が見えなくなっていきます。
よいイシューには3つの条件がある
第1章では、「よいイシュー」とは何かが整理されています。
本書では、よいイシューには3つの条件があるとされます。
1つ目は、本質的な選択肢であること。
その問いに答えることで、判断や行動が変わるかどうかです。
たとえば、「なぜうまくいかないのか」と漠然と考えるだけでは、まだイシューとして弱い。
それに答えた結果、次の行動が変わる問いになっている必要があります。
2つ目は、深い仮説があること。
イシューは、ただの疑問ではありません。
「もしかすると本質はここにあるのではないか」という仮説を含んだ問いです。
本書では、常識を疑うこと、新しい構造で見ることの重要性が語られます。
みんなが当然だと思っている前提を疑う。
別々に見えていたものの関係性を見つける。
物事を新しいグループやルールで整理し直す。
そうすることで、問いが深くなります。
3つ目は、答えを出せること。
どれだけ重要でも、今の方法や情報では答えに近づけない問いは、まだイシューとは言いにくい。
この条件は、実務では特に大事です。
壮大な問いを立てることはできます。
けれど、仕事として扱うなら、答えに近づく道筋が必要です。
つまり、よいイシューとは、重要で、仮説があり、答えに近づける問いです。
情報を集めすぎると、問いが鈍る
第1章でおもしろいのは、情報収集についての考え方です。
本書では、イシューを見つけるために情報は必要だとしながらも、「集め過ぎない」「知り過ぎない」ことの重要性も語られます。
これは、読書や学習にもそのまま当てはまります。
本をたくさん読む。
論文をたくさん読む。
情報をたくさん集める。
動画や記事で知識を増やす。
それ自体は悪いことではありません。
ただ、情報が増えすぎると、自分の問いが見えにくくなることがあります。
他人の整理、既存のフレーム、一般的な正解に引っ張られすぎるからです。
本書が重視するのは、一次情報に触れることです。
現場を見る。
顧客と話す。
当事者の声を聞く。
生データを見る。
実際の反応を観察する。
これは、専門職にとってかなり重要な視点だと思います。
知識は必要です。
ただ、知識だけで現実を見た気になると、問いが現場から離れてしまう。
本を読むことと、現場を見ること。
概念を学ぶことと、目の前の出来事を観察すること。
この往復の中でしか、実践に耐える問いは生まれにくいのだと思います。
PTとして読むなら、「何を解くべきか」を間違えないこと
私は理学療法士としてこの本を読むと、評価や臨床推論にもかなり近い話だと感じます。
たとえば、患者さんが「膝が痛い」と言う。
そのとき、すぐに膝だけを見ることもできます。
膝の可動域。
筋力。
圧痛。
歩行時の痛み。
運動療法の選択。
もちろん、それらは必要です。
ただ、本当に答えるべき問いは「膝をどうするか」ではないかもしれません。
なぜ膝に負担が集中しているのか。
痛みを変えるうえで、今もっとも影響している要因は何か。
本人の生活上、まず変えるべき行動は何か。
医療機関で確認すべきリスクはないか。
そもそも自分が介入すべき状態なのか。
このように、同じ「膝の痛み」でも、立てる問いによって介入は変わります。
つまり、臨床でも重要なのは、解決策を増やすことだけではありません。
「今、この人に対して、どの問いに答えるべきか」を見極めることです。
これはPTだけの話ではありません。
教育者なら、「なぜこの人は理解できないのか」ではなく、「どの前提でつまずいているのか」。
管理職なら、「なぜ部下は動かないのか」ではなく、「動けない構造はどこにあるのか」。
営業なら、「どう売るか」ではなく、「顧客は本当に何に困っているのか」。
個人事業なら、「どう集客するか」ではなく、「誰のどんな未解決の問いに応える事業なのか」。
仕事が変わっても、問いを立てる重要性は変わりません。
「So What?」は、実践に問いを戻す言葉
第1章では、イシューが見つからないときの方法として、「So What?」を繰り返すことが紹介されます。
「だから何か?」と問い直すことです。
これは、少し冷たく聞こえる言葉かもしれません。
でも、実践においてはかなり大事です。
知識を得た。
分析した。
説明できる。
資料にまとめた。
では、だから何が変わるのか。
判断が変わるのか。
行動が変わるのか。
優先順位が変わるのか。
相手への関わり方が変わるのか。
次に見るべきものが変わるのか。
ここまで考えて、初めて知識が仕事に接続されます。
Reading into Practiceというブログの考え方にも、これはそのままつながります。
本を読んだ。
概念を知った。
なるほどと思った。
では、それを仕事に戻すと何が変わるのか。
この問いを持たないと、読書は「わかった気がする」で終わってしまう。
逆に、「So What?」を繰り返すことで、本の内容は実践の問いに変わっていきます。
この本から持ち帰りたい問い
『イシューからはじめよ』の序章と第1章から、私が仕事に持ち帰りたい問いは次のようなものです。
今、自分が解こうとしている問題は、本当に答える価値があるのか。
その問いに答えることで、判断や行動は変わるのか。
情報を集める前に、仮説を持てているのか。
現場や一次情報に触れずに、わかった気になっていないか。
作業量で安心しようとしていないか。
「頑張っているのに成果が出ない」と感じるとき、足りないのは努力ではなく、問いの選び方かもしれません。
仕事を減らす。
問いを絞る。
答える価値のある問題に集中する。
これは、楽をするための考え方ではありません。
むしろ、プロフェッショナルとして価値ある仕事に向き合うための姿勢です。
持ち帰りたい問い
この本を読む意味は、内容を覚えることだけではなく、自分の仕事の見方を少し変えてみることにあると思います。
『イシューからはじめよ』を自分の仕事に置き換えるなら、次のように問い直せるかもしれません。
- いま取り組んでいる仕事は、本当に解くべき問いに向かっているか
- 作業を増やす前に、問いを絞る余地はないか
- 自分の専門性は、どの問いに向けて使われているか
「頑張っているのに成果が出ない」と感じるとき、足りないのは努力ではなく、問いの選び方かもしれません。
仕事を減らす。
問いを絞る。
答える価値のある問題に集中する。
これは、楽をするための考え方ではありません。
むしろ、プロフェッショナルとして価値ある仕事に向き合うための姿勢だと感じました。
この記事では、私が仕事や実践に接続できると感じた部分を中心に書きました。
実際に本を読むと、ここでは扱わなかった具体例や文脈から、また違った問いが立ち上がるかもしれません。
気になった方は、ぜひ本書を手に取って、自分の仕事ならどう読み替えられるかを考えてみてください。
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